何百年も持つ“我慢し”耐える家
しかし一方で、若い人たちが浴衣や着物を好んで着るようになり、日本料理にも人気が集まり、その格好の良さや美味い味のみならず、清々しさや優しさ、さらには健康的な感覚、そうです。肌触りや舌触り、さらには足触りが、衣食住において自然素材の持つ本物思考となっているような気もするのです。
中でも年中暮らす家は長年に渡って、わが国個有の風土と気候の中に息づいているのです。そのテーマこそ“湿気”です。寒さ対策は先の断熱をしっかりして窓をきっちり締め、まきや炭などを炊いて、自らは重ね着すれば過ごせます。しかし熱く、しかも今のような湿気の多い季節は例えクールビズと言えども、つらい時期です。「夏を旨とすべし・・・」の「徒然草」の気候風土を原点とする本質は、本来のあるべき姿を教えていて、まさにこの梅雨の季節の過ごし方とも言えるのです。
皮肉なことにわが国の住まいは暑いときも寒いときも住む人にとっても、その構造においても、常に湿気に関わって来たことが分かります。この梅雨の季節こそわが国の住まいはその本領を発揮するのです。
そこでこの先さらにどうなるかですが・・・、難しく考えることはないのです。今までやってきた事のちょっとのことを我慢し、節約するだけでいいのです。すでに高齢者の多くはエアコンを嫌い、自然の風を求めて自然と調和する生活を求めているのです。なぜならそれが経済の心配がなく、風邪も引かず何よりも快適だからです。
このちょっとの我慢は飽食の時代に、心と体で豊かな気持ちとなるのです。そして次第にその住まいの形はかつて見た民家や町家、あるいは白川郷の合掌造りの構造や原理を彷彿させるものとなるのです。
そして昔の人がよくしていたように時々わが家を離れて観たり、家の周りを歩いて回って雨後の点検をするなどで、その家は何百年も持つ“我慢し”耐える家となるのです。
■イラスト:雨後の点検ポイント(天野彰)