えっ?六十歳で家を建てる?
長寿命時代の六十歳など“若者の部類”に入るのです。現に私の所属するロータリークラブなどでは96歳を頭に高齢会員が多く、私など「若いもん!」なのです。
「六十歳から家を建てる」(新潮選書)なる本を書きました。早くに妻を亡くされて、一人暮らしの70歳を越すTさんの家づくりをきっかっけに、頼もしい人生を送る人たちの素晴らしい家づくりを、実例を交えて紹介したものです。
当初の本のタイトルは「七十歳から家を建てる」のはずだったのですが、編集担当から「それでは購読者が限られる」と言うこと?で、やむなく「六十歳…」にしたのですが、それでも「え~?六十歳で家を建てる?」「なんで今さら?」「ローンを返し終わったばかりなのに、資金は?」などとほとんどの人が怪訝な顔をされるのです。が、さにあらずで、実際には私がお手伝いした人の中には60歳どころか70歳以上で今までの家を建て替えたり、リフォームされる人も多く、最高齢では80歳をゆうに越えた人もいらっしゃるのです。
ところが意外にも、こうした人に限ってエレベーターを設置したり、浴室トイレなどをゆったりして、段差もない“老いて”使いやすい「終の棲家」的なものにしようとは考えないのです。
むしろ今までの広過ぎる家を“減築”して縮めて、質素にかつ合理的に住もうとされるのです。
むしろその住まいの発想は、今までの子育て優先、家族優先の考えを切り捨て、余生をいかに元気に活きるかをテーマに、家族の団らんではなく友人や趣味の仲間の“団らん”で、妻との“茶の間”なのです。
そしてその資金はどう工面するか?よりも、今までの土地や広さの有効利用を考え、それをどう生かすかを考えるのです。
■写真:N邸、囲炉裏の炉端(写真天野彰)
結果として生命保険担保のローンとなったり、余った部分を貸しガレージやアパート、いや下宿?にするなどぎりぎりの家づくり(リフォーム)をされるのです。