具体的な相談事例~リフォーム業界の背景(7)
北区在住 M様夫妻のご相談事例
定年を前にして、将来のセカンドライフを充実したものにしたいので、趣味であるお茶をする和室の増築(約5坪)と屋根・壁・防水リフォームとフローリング、クロスの貼替え工事を行いたい。
<前提条件>
・家族構成:ご主人(59歳)奥様(59歳)ご長男(28歳)
・対象建物:平成2年 某ハウスメーカーにて新築(築21年)
在来木造 2階建て 約40坪
・ご予算 :700万円程度に抑えたい
(1)ライフプランを整理する
・ご主人様、奥様とも現在共働きで、いずれも平成22年度中に退職予定
・退職金はそれぞれ入るが、老後の資金として確保しておきたい。
・預貯金は自由に使える資金が700万円程度。可能であるならその範囲で行いたい。
・この家に愛着があり、快適なので建替える意思はない。
・この場所の環境も利便性も好きなので売却する意志はない。
・ご長男は現在独身であり、家を相続する意志がある。
・将来、結婚後2世帯になる可能性があるが、時期は未定である。
以上のことから、建替え、住替えのシミュレーションを行なうがリフォームをすることに決定。
なお、リフォームをした場合のイニシャルコスト(当初計画資金700万円)と10年後に2世帯住宅リフォームを行った場合の費用800万円、15年後の維持メンテナンス費用300万円を加えたキャッシュフロー表を作成し、確認してもらう。
(2)リフォームの目的をはっきりさせる
平成2年築ということで、新耐震基準の建物だが、築20年以上ということもあり、家屋調査を実施した。
その結果、基礎部分、外壁部分のクラックもなく、室内外の建具状況も違和感がなく、一般診断法における耐震診断も、上部構造評点は1階部分で1.04、2階部分では2.25という数値で倒壊しないレベルで、建物の状況は非常に良好だった。また、念のために近隣の地盤データを取り寄せ、地盤状況も良好との確認を行なった。
しかし、外壁・屋根に関しては、20年以上もメンテナンスが放置状態で、このままだと防水面に問題があり、建物の耐久性を損なうとの判断から、外壁・屋根の補修・防水・吹替え工事は必須とした。
当初は、間取りの変更、キッチン、バス、洗面などの水廻りリフォームも希望されたが、まだご長男が独身であり、将来2世帯になる可能性もあることから、資金面も含め、外壁・屋根のメンテナンスリフォームとセカンドライフを充実させるための和室の増築を最優先事項とし、間取りの変更と水廻りリフォームは行なわず、内装は最低限の現状回復リフォームとすることにした。
※一般診断法とは、財団法人日本建築防災協会の木造住宅耐震診断プログラム評価制度によるもので、一般的な目安として次の4段階に分類判定される。
1.5以上 ・・・◎倒壊しない
1.0以上~1.5未満・・・○一応倒壊しない
0.7以上~1.0未満・・・△倒壊する可能性がある
0.7未満 ・・・×倒壊する可能性が高い
(3)信頼できるリフォーム業者に相談し、施工してもらうこと
将来のメンテナンスも考え、半径5km以内で一戸建てリフォームが得意な業者を紹介する。
リフォームも得意な地元の工務店を2社、地元の大手リフォーム専門会社を1社の計3社にて相見積りを行なった。
第三者機関にて耐震診断を行なったため、具体的な補強工事と外壁・屋根の仕様が統一され、各リフォーム会社の仕様の違いによる価格差は出てこないと思われたが意外に金額の開きがあった。
最終的な見積り提示額は、工務店Aが810万円、工務店Bが975万円、大手リフォーム店Cが895万円(200万円近い値引き後)だった。最終的には、3社の見積り内訳比較表を作成し提示した上で、工務店Aに決まったのだが、ここには目に見えない決定要素があったようだ。
実際には最初の概算見積額は、1000万円前後でほぼ同程度だったが、お客様であるM様ご夫妻と工務店Aの社長が意気投合、当初の予算から100万円程度を引き出し、かつ仕様変更など減額の要素も納得させていたため、すんなりと工務店Aに決まった。
大手リフォーム店に関しては、決めてもらえばということでさらなる値引きも提示したが、この局面での値引きは、不信感にしかならない。もちろん価格も大事だが、最終的にはどこと一生お付き合いがしたいかという目に見えない決定要素が住宅リフォームにはある。